31文字の不思議なスマホ
なぁ親父 墓石に水かけ汗ぬぐう 今日は猛暑だ 水分とれよ 牛濱慶介さん(高3) 第5回最優秀賞 |
亡き父を思って話しかける高校三年生男子の語り口調が印象的な作品です。猛暑の日。時空を超えた父の健康すらも気づかうあたたかな心に惹かれ、この年のジュニアの部の最優秀賞となった作品でした。 |
お墓参りの風景と、「水分とれよ」という呼びかけがきれいにつながってるね。 |
家族や友達とはメールや電話、LINEで話すことができるように、57577の短歌は、亡くなって天国にいる人たちとさえ話すことができる、【31文字の不思議なスマホ】です。 想いを込めて、詠んだ歌は時空を超えて、きっと相手にも届くのではないでしょうか。 |
きっとこのお父さんにも、作者のこころが届いたよね。 |
古来、多くの人々が天国の大事な人々に31文字の手紙を送ってきました。 これを「挽歌」と呼びます。 |
【感謝】の気持ちは 時空さえも超えていく。 |
直接会うことはできない大事な誰かにも、ときどき、31文字のメールを送ってあげてください。 作者の気持ちや、あたたかな心の体温がきっとかけがえのない贈りものになると思います。 |
こんな作品もあります
「ヘタクソ」と キャッチボールで言われたが あれはあれでも亡き祖父の愛 大木俊輔さん(中2) 第1回審査員特別賞 |
仏壇のおばあちゃんにも見せるため 開き向き変え通信簿置く 村松沙紀さん(中3) 第3回入選 |
ひいばあちゃんくもになったときいたから おそらをみるよはれでもあめでも 大江悠亜さん(年長) 第5回入選 |
思い出す ぬくもり詰まる 祖父の背を 祖父に似ている マリーゴールド 下地南瑠さん(高3) 第7回入選 |
数字で伝わる愛もある
百七十五センチ分も愛されて 私は愛する側になったのだ 山本優さん(高3) 第1回入選 |
おお、何だかかっこいい! |
高校三年生の作者が自分の身長を詠んだ「百七十五センチ」という数詞がとても効果的な一首。 自分の身長だとはあえて書かず、「感謝」等の直接的な言葉は使っていないのに、読者には作者の思いが充分に伝わります。 |
「たくさん愛されて」「ずっと愛されて」よりも大きく感じるね。不思議だなあ。 |
こんなふうに、時には一首の中に「数字」をうまく入れ込み、作者ならではの「数詞」を生かすことで、オリジナリティのある歌が生まれます。 |
作品に「数詞」を生かす! |
表現は細部に宿る、と言われますが、数字も丁寧に表現することで、とても個性が豊かな歌になることを実感してください。 |
自分だけの数字、何かあるかなあ。 |
こんな作品もあります
熱が出て 寝込んだ時の 母親の 作ったおかゆが 一番うまい 兵藤葵さん(高1) 第4回入選 |
「がんばって」毎朝母が言う言葉 一言だけど 一言じゃない 栗原優奈さん(高3) 第4回優秀賞 |
隠してもいつも母にはすぐばれる 「あんたの母親18年目」 堀千尋さん(高3) 第3回入選 |
ねずみ年 生まれた時は 三・九キロ ひとまわりして 三十九キロ 竹村心護さん(小6) 第6回入選 |